医療関係者向けのページです

ケーススタディー(1) 次の症例の感染症原因菌をお考えください。


Question:この菌種名をお答えください。

患者背景

●患者
60歳、女性、基礎疾患(糖尿病)

●経過
慢性副鼻腔炎のため、通院加療中発熱(38.6℃)、全身倦怠、呼吸困難を訴え外来受診、胸部X線にて浸潤陰影を認め臨床的に肺炎と診断した。

検査成績

喀痰検査成績

Answer:原因菌は…

treptococcus pneumoniaeでした。


写真6. 喀痰採取容器(スピュータム・コレクションシステム)
解説

●この菌種は呼吸器感染症の原因上位菌であり、さらに脳脊髄液や血液からも分離されます。

●喀痰培養検査では検体採取が重要であり、検査に価する痰を喀出させ、その肉眼評価を行います
(喀痰採取時の菌の飛散を防ぎ、容易に採取保管輸送が可能な専用容器を写真6.に紹介します)。

●S.pneumoniae は莢膜をもつグラム陽性双球菌であり、鏡検所見にて容易に推定可能です
(鏡検所見での成績は推定であっても、臨床への迅速報告が大切です)。

●S.pneumoniae は炭酸ガス培養の方が発育良好であり、5〜10%の炭酸ガス培養を推奨します。

●S.pneumoniae は中心陥没型集落が特徴とされますが、ムコイド集落も高頻度にみられます。

●同定にはオプトヒン感受性検査(この場合は好気条件)を実施しますが、まれにオプトヒン耐性菌も見られるので、胆汁溶解試験を必ず実施して下さい。

●PRSP、PISPも危惧されていますので、薬剤感受性検査ではペニシリン耐性・感受性の有無を確認して下さい。