<看護師のインフルエンザワクチンに関する意識調査>
インフルエンザワクチン接種準備とワクチン廃棄に関する問題が明らかに

2010/07/07
※プレスリリースは発表時のものを掲示しております。発表後、内容に変更がある場合がありますのでご注意ください。

約6割の看護師がインフルエンザワクチン接種業務で日常業務に支障

多忙な業務の中、高まるミス、ヒヤリハットのリスク
日本ベクトン・ディッキンソン株式会社(略称:日本BD、本社:東京都港区赤坂、代表取締役社長:フランク・フローリオ)では、昨シーズンにインフルエンザワクチンを患者に接種した全国の看護師1,000人を対象に、接種関連業務及び、接種準備の現状に関するインターネット調査を実施しました。

2009年10月から2010年2月、新型インフルエンザが大流行した昨シーズンは、季節性に加え新型インフルエンザの接種希望者が殺到しました。どのワクチンを使用するのか、どのように大勢の接種希望者に対応すべきかなど、医療現場の混乱を伝える報道が相次ぎました。そこで、日本ベクトン・ディッキンソンでは、看護師のインフルエンザワクチン接種に関する業務の実態を把握することを目的にこの調査を実施しました。

日本医科大学付属病院 医療安全管理部 感染制御室 看護師長 藤田昌久先生は、「インフルエンザワクチンの接種は、多くの対象者が短期間に集中することが特徴的です。しかもワクチンがバイアルの場合、開封後からの使用期限が短いため、当日の準備が余儀なくされることから、準備に係る業務負担は大きなものとなります。バイアルから注射器に充填する作業は、微生物汚染等のリスク回避や正確な投与量を吸引する必要性から、正確かつ安全性を求められることになり、繁忙な日常業務に加えて行うことは大きな負担感を強いることになります。ワクチン接種に伴う作業の軽減および効率化を進めるとともに、リスクマネジメントの観点からも改善が求められるところです。さらに調整当日に使用できなかったワクチンを廃棄しなければならないことは、必要な人への提供が量的、時間的に制限されることから、今後のインフルエンザワクチン接種体制において改善が望まれるところです。」と述べています。

今回の調査では、回答者の約6割がワクチン接種作業で日常業務に支障をきたしていることがわかりました。多忙な業務の中で、煩雑なワクチンの準備によるミスや誤った処置、不適切な医療器具の使用に伴うリスクなど、回答者の4割がミス・ヒヤリハットへの不安を抱えながら接種準備を行っている実態が浮かび上がりました。

一方で、ワクチン不足が取り沙汰される中、廃棄についても回答者の約半数が「使い切れずに廃棄した経験がある」と回答しました。このうち、約4割が「捨てなければいけない事がもったいない」と思っていることがわかりました。また、約25%が「ワクチンの無駄をなくすよう、メーカーに改善してほしい」と答えるなど、複数人分のワクチンが充填されているバイアル製剤についても課題が明らかになりました。
北里大学東病院 薬剤部 臨床薬学博士の平山武司先生は、「今回の調査から、医療現場におけるインフルエンザワクチン接種にあたっての課題として、作業負担、安全性、未使用ワクチン廃棄の3つの問題点が明らかになりました。この3つの問題点は、ワクチンのプレフィルドシリンジ化により、大きく改善されるものと考えます。すなわち、ワクチンを医療現場でバイアルから注射器に吸引して投与する方法ではなく、予め注射器にワクチン1人分が充填された状態で医療現場に供給されるプレフィルドシリンジ製剤を用いるのです。この方法なら接種に関する調製作業が格段に減るとともに、投与量や器具の間違いなどが起こりにくくなり安全性も高まります。さらに開封後の使用期限切れが理由でワクチンを捨てることも少なくなるでしょう。」と述べています。

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<看護師のインフルエンザワクチンに関する意識調査>
繁忙期の接種には、安全への不安
- 結果のまとめ -

多忙な中での煩雑な接種準備にミスの不安を感じる看護師

■ 約6割の看護師がインフルエンザワクチン接種業務で日常業務に支障
インフルエンザワクチンの接種業務により日常業務に支障が出た経験が「ある」と答えた看護師は60.2%でした。
また、その内容については、「業務が多くなり、ストレスが増える」をあげた人が79.2%と最も多くなっています。その他「ワクチン開封後の管理や在庫管理が大変である」57.3%、「多忙により、エラーを起こす不安が増大する」55.6%、「ワクチン被接種者以外の患者さんへの医療の質が下がる」54.7%と、患者の安全への影響を気にした答えが上位を占めました。

■ インフルエンザワクチンの接種準備に不安を感じる看護師
 40.8%の看護師が、接種の準備作業(ワクチンを注射器に充填する作業)で負担を感じたことがあると回答しました。
 最も不安なこととしては、「ワクチンを注射器に充填する際に投与量が正確かどうか」が一番多く、51.2%でした。「ワクチン、器具の取り違い」の8.3%とあわせると、約6割がミスの発生リスクを不安に感じていることがうかがえます。次いで2番目に多かったのは、「微生物汚染の可能性」で24.0%でした。器具そのものの構造やその管理に起因するリスクも不安としてあるようです。

■ 実際に13.0%の看護師が接種準備でのミス、ヒヤリハットの経験あり
 接種の準備作業(ワクチンを注射器に充填する作業)の段階にだけ絞ってミス・ヒヤリハットの経験を尋ねたところ、13.0%が「ある」と答えました。

■ ミス・ヒヤリハットの内容で一番多いのは「注射器へのワクチン充填量の間違い」
 ミス、ヒヤリハットの具体的な内容としては、87.7%が「注射器にワクチンを引く際、充填する量を間違えた」と答えており、Q.4の不安同様に最も多くなっています。「器具の取り違え」も50.0%とここでは3番目に多い数字になりました。
「器具の破損」についても81.5%の人が選択していることから、バイアルから注射器へ充填するという作業段階で、無駄になってしまっているワクチンも相当数ある可能性がうかがえます。
約半数の看護師が、インフルエンザワクチンの廃棄経験あり

■ 廃棄理由で最も多いのは「開封後の使用期限までにワクチンを使い切れないから」
 インフルエンザワクチンを使い切れずに廃棄した経験については、49.1%の看護師が「ある」と答えました。(Q.10)
 その一番の理由を尋ねると「開封後の使用期限までに使いきれなかったから」が61.7%を占め、次に「実際の接種希望者数と見込み数が異なり、余ったから」が34.6%で続いていることから、当日に一斉に準備した分や、バイアルから1人分だけ使った余りなどが使用期限を迎えて廃棄されているというような背景がうかがえます。

■ 廃棄について、約4割が「捨てなければいけない事がもったいない」と思っている
 廃棄について、現場の看護師がどのように感じているかを尋ねたところ、40.3%が「捨てなければいけないことがもったいない」と答えました。それ以外にも、「ワクチンの無駄をなくすよう、メーカーに改善してほしい」との答えが24.4%で2番目に続くなど、ワクチンを捨てることに少なからずストレスを感じている現状が明らかになりました。