国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所(大阪府茨木市、理事長:米田悦啓、以下「医薬基盤・健康・栄養研究所」)と日本ベクトン・ディッキンソン株式会社 (本社:東京都港区赤坂、代表取締役社長 阿知波達雄、以下「日本BD、)は本日、免疫学研究の発展を通じた健康長寿社会の実現に向け、免疫老化メカニズムの解明を目指す共同研究契約の締結を発表いたしました。
今回の共同研究では、医薬基盤・健康・栄養研究所が世界をリードする霊長類モデルや疾患モデルと、基礎研究から創薬、臨床応用に至るまで、先端技術を駆使したフローサイトメトリーシステム
*1のパイオニアとして、国内外の研究機関から高い支持を得るBDが誇る最新のハイパラメーターフローサイトメトリーシステムとを組み合わせることで、個体から細胞レベルでの免疫老化メカニズムの解明、および細胞生物学の新たな研究技術として期待されるハイパラメーターフローサイトメトリーの実用化基盤の確立を目指します。
本共同研究で用いられる「BD FACSymphony™フローサイトメーター」は、世界で初めて商品化された革新的な自動細胞解析分離装置、Fluorescence Activated Cell Sorter(FACS)をはじめとする「BD FACS™シリーズ」の上位機種で、細胞のさまざまな特徴を最大50項目まで同時測定出来るなど、研究者が免疫動態を俯瞰的に解析することに貢献します。
また、20以上のパラメーターを使用して、より高いレベルでの解析を希望する研究者のニーズを満たすために特別設計されたBDのハイパラメーターカスタム試薬プログラムの提供により、レアポピュレーション解析や、弱陽性のポピュレーションの解析を高精度で行うことが可能となります。これらを組み合わせて使用することで、老化により最も影響を受ける免疫システムのコンポーネントについて迅速に同定できるようになり、免疫老化に対する解決策の解明に向けた研究が加速されます。
医薬基盤・健康・栄養研究所 医薬基盤研究所長 近藤裕郷は、「個体レベルでの免疫老化現象の解明には、動物モデルを用いた実験が必要不可欠です。しかしながら、これまでヒトの免疫老化現象を再現出来る適切な動物モデルが存在しないという問題が指摘されており、免疫老化研究は世界的に見ても未だ発展途上であると考えられます。 弊所では、ヒト免疫老化現象を再現し得る可能性の高い霊長類動物モデルを有していますが、高齢個体から得られる実験試料(血液等の検体)は量的にも非常に限られており、高度な解析を行うことが困難でした。今回、本共同研究により日本BD社の誇る最新FACS技術を導入することで、これら課題を解決し、個体レベルでの免疫老化現象の解明を成し遂げたいと考えています。」と述べています。
日本BD代表取締役社長 阿知波達雄は、「 弊社では、“明日の医療を、あらゆる人々に”という企業理念のもと、ライフサイエンス、メディカル、およびインターベンションの各領域における様々な連携を通じて、患者さんのための新たな診断や治療につながる研究の推進に積極的に取り組んでおります。日本の、そして世界全体の健康長寿社会の実現に向け、免疫老化におけるメカニズムの解明を目指す今回の共同研究を通じて、弊社のハイパラメーターフローサイトメトリーシステムが、老化による免疫低下を含む細胞プロセスについてのより深い理解を導き、研究者による細胞解析を新たなレベルに高めるための先端研究に貢献できることを大変嬉しく思います」と述べています。
*1 フローサイトメトリーシステム:
1973年、レーザー光を照射し蛍光標識抗体や蛍光物質でラベルされた細胞を検出・分離することのできる、革新的な自動細胞解析分離装置、Fluorescence Activated Cell Sorter(FACS)は、世界で初めてBDによって商品化されました。1980年代、BD FACSCan™セルアナライザーが発売されると、そのコンパクトさと機能性で多くの研究者の注目を集め、フローサイトメーターの普及は一段と加速されました。現在、フローサイトメーターは、研究用と臨床検査用に大別されています。研究では、用途にあわせて、細胞の同定や細胞数のカウントを行うことが出来る「セルアナライザー」と、様々な分析と迅速に細胞の分取を行うことが出来る「セルソーター」が用いられており、免疫学やがん、再生医療分野のみならず、微生物分野など幅広い研究分野をサポートできるものへと発展しています。
BD FACS™シリーズの上位機種 「BD FACSymphony™ フローサイトメーター」