国立がん研究センターと日本BD
免疫チェックポイント阻害剤投与の効果予測実現に向けた共同研究契約を締結

2018/06/27
※プレスリリースは発表時のものを掲示しております。発表後、内容に変更がある場合がありますのでご注意ください。


国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、所在地:東京都中央区、以下「国立がん研究センター」)と日本ベクトン・ディッキンソン株式会社 (本社:東京都港区赤坂、代表取締役社長 阿知波達雄、以下「日本BD」)は本日、がん治療を大きく転換する可能性を秘めた治療法として世界の注目を集めるがん免疫療法のひとつ「免疫チェックポイント阻害剤」における効果予測の実現を目指し、新たなプラットフォーム構築に向けた共同研究契約の締結を発表いたしました。

患者さんの生活の質(QOL)の改善、延命効果や症状の緩和、および医療経済等の観点から国内外で様々な研究開発が行われておりますが、国立がん研究センターの最新予測*1では、2017年のがん罹患数(対象とする人口集団から、一定の期間に、新たにがんと診断された数)の推計は、全体で約101万4千例(男性57万5千900例、女性43万8千100例)にのぼります。

こうした状況下、がんに対する新しい治療方法として、がん細胞が免疫にブレーキをかける仕組みに働きかける免疫チェックポイント阻害剤の臨床における効果が明らかにされ、現在、幅広いがん種への適用や併用療法の開発に向けた取り組みが活発化しています。しかしながら、免疫チェックポイント阻害剤は、効く人と効かない人を事前に見分ける効果予測が困難であることから、有効性の指標(バイオマーカー)の同定や新規治療法開発による治療効果の向上が課題とされています。

そのため、本共同研究では、国立がん研究センターの有するがん免疫研究における高度な研究技術および豊富な臨床経験・検体と、基礎研究から創薬・臨床応用に至るまで先端技術を駆使したフローサイトメトリーシステム*2のパイオニアであるBDが誇るBD FACS™フローサイトメーターを最大限活用し、がん免疫療法におけるバイオマーカーの同定など臨床応用に向けた
新たなプラットフォームの構築を目指します。

レーザー光を照射し蛍光標識抗体や蛍光物質でラベルされた細胞を検出・分離することのできるフローサイトメーターは現在、
研究用と臨床検査用に大別されています。研究では、用途にあわせ、細胞の同定や細胞数のカウントを行うことが出来るセルアナライザーと、様々な分析と迅速に細胞の分取を行うことが出来るセルソーターが用いられており、免疫学やがん、再生医療分野のみならず、微生物分野など幅広い研究分野をサポートしています。

本共同研究で用いられる最新の「BD FACSLyric™フローサイトメーター」は、幅広い臨床的アプリケーションに対応できる優れた柔軟性と高性能を兼ね備えたセルアナライザーで、マルチカラー(最大10カラーの多項目測定)に対応できることから、免疫細胞のより詳しい機能解析が可能となります。こうした詳細、かつ高度な解析による効果予測を実現することで平均化された画一的な治療法ではなく、個々の免疫状態に応じて、患者さん一人ひとりにとって最適で安全な治療法を適用する次世代の個別化免疫療法の構築に寄与することを主目的と位置づけております。

国立がん研究センター 研究所 腫瘍免疫研究分野、先端医療開発センター 免疫トランスレーショナルリサーチ分野 分野長の西川博嘉は、「当分野では”臨床効果と直結する抗腫瘍免疫応答の本態を解明する”という視点でがん免疫研究を進めております。今回の共同研究では、研究成果の一端をBD社が誇るフローサイトメーター技術を用いて臨床展開することを目的とします。
さらにBD社のもつシングルセル解析技術と連携することで、より効果的な新規がん免疫療法開発およびバイオマーカー探索から同定へと連携して研究を進めていきたいと考えております。」と述べています。

日本BD代表取締役社長 阿知波達雄は、「弊社は“明日の医療を、あらゆる人々に”という企業理念のもと、ライフサイエンス、メディカル、およびインターベンション領域におけるソリューションの提供に努めており、様々な連携を通じ、より多くの患者さんのための新たな診断や治療につながる研究の推進に積極的に取り組んでおります。今回の共同研究を通じて、社会的影響力の大きい
がん研究の分野における日本発のイノベーション構築に貢献できることを大変嬉しく思います」と述べています。

*1 国立がん研究センターがん情報サービス 「2017年がん統計予測」(更新日:2017年09月20日)より。
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/short_pred.html
*2 フローサイトメトリーシステム:
1973年、レーザー光を照射し蛍光標識抗体や蛍光物質でラベルされた細胞を検出・分離することのできる、革新的な自動細胞解析分離装置「Fluorescence Activated Cell Sorter(FACS)」は世界で初めてBDによって商品化されました。1980年代、「BD FACScan™セルアナライザー」が発売されると、コンパクトさと機能性で多くの研究者の注目を集め、フローサイトメーターの普及は一段と加速されました。

国立研究開発法人国立がん研究センター研究所 腫瘍免疫研究分野について:
腫瘍免疫研究分野は、基礎免疫学に加え、ゲノム科学、代謝学および各種のオミクス解析を統合することで、がん微小環境での抗腫瘍免疫応答の本態を解明し、新たながん免疫療法の開発に向けた基礎的研究を進めています。
特に、がん微小環境に多数存在する制御性T細胞などの複雑な免疫抑制ネットワーク機構を、動物モデルやがん患者さんの検体を用いた研究を進めることで解明し、がん免疫監視から免疫寛容を制御している分子基盤を明らかにすることを目指しています。

日本ベクトン・ディッキンソン株式会社について:
日本BDは、米国BD(ベクトン・ディッキンソン アンド カンパニー)の日本支社として1971年創立 (1985年日本法人化)。ライフサイエンス研究用製品、臨床検査・感染制御、環境検査関連製品、薬剤投与等の治療用製品を輸入販売。
主要製品:フローサイトメーター(自動細胞解析分離装置)および試薬、血液培養等の細菌・ウイルス検査システムや迅速診断キット、子宮頸がん検査システム、医療従事者を職業感染や抗がん剤から守る針刺切創防止機構付きの安全器材、閉鎖式輸液システム、糖尿病治療のためのペン型インスリン注入器用注射器材、プレフィル用シリンジや閉鎖式薬物移送システムなど。
グローバルスタンダードの製品を日本の品質基準でお届けするため、日本BDの生産物流拠点として、1987年、福島県福島市に
完成し、昨年、30周年を迎えた福島工場では、生培地、プレフィル用シリンジを製造しています。
詳細は、日本BDホームページwww.bd.com/jp/ をご参照ください。
©2018 BD。 BD、BDロゴおよびその他の商標は Becton, Dickinson and Company が保有します。

<本件に関するお問い合わせ>
国立研究開発法人国立がん研究センター 企画戦略局 広報企画室
Tel:03-3542-2511(代表)E-mail:[email protected]
日本ベクトン・ディッキンソン株式会社 広報部
Tel: 03-6234-5550/ E-mail:[email protected]

【参考資料】 
「BD FACSLyric™」について


[写真: (左) BD FACSLyric™フローサイトメーター正面; (右)BD FACSLyric™フローサイトメーター使用風景]
*BD FACSLyric™フローサイトメーター(一般医療機器、製造販売届出番号 07B1X00003000161)



特徴
・幅広いアプリケーションに対応できる優れた柔軟性と高性能を兼ね備えたセルアナライザー
・マルチカラー(最大10カラーの多項目測定)に対応