※ご視聴後のアンケートでリクエストいただきました方に、新潟大学のTTM アクションシート(PDF)をお送りさせていただきます。(原則として医療従事者の方に限り、お送りさせていただきます)
演題1:TTMに対する研究と今後の展望(仮)
演者:西山 慶 先生 新潟大学医学部医学科 救急医学講座 教授
演題2:新潟大学TTMプロトコルの紹介
演者:本田 博之 先生 新潟大学医歯学総合病院 集中治療部 講師
抄録:西山 慶 先生 新潟大学医学部医学科 救急医学講座 教授
2002 年、院外心停止後の患者において低温域TTM*¹(32-34℃)が神経学的転帰を改善することが示され、現在ガイドラインでは低温域TTM が推奨されている。しかし、その後の介入試験には低温域TTM が有効である研究(HYPERION試験)と有効でない研究(TTM 試験、TTM2 試験)が混在しているため、臨床現場に混乱が生じている。
最も危惧するべきことは、TTM2トライアルへの誤解による、「蘇生後ケアの差し控え」である。TTM2トライアルでは対象群において決して「発熱放置」は行われておらず、その多くにおいてディバイスを用いた体温管理を行っていることに注意するべきである。TTMトライアルの後においてすら、「蘇生後ケアの差し控え」による蘇生後患者の予後悪化傾向が認められたとの報告もあり、今後一つの臨床研究にミスリードされた形での「蘇生後ケアの差し控え」を行わないよう、救急集中治療や循環器内科を含めた多くの領域の医師は留意しなければならない。
前述の研究群を俯瞰すると、介入群・対照群ともに、さまざまな神経学的転帰を認め、さまざまな介入温度で実施されていることが判る。これらの事実は、蘇生後脳症の重症度を評価する方法が未発達であり、実際にはそれぞれの患者の重症度が大きく異なる研究群を比較していることを示している。また、大規模試験ほど有効性を認めていないことから、対象患者の重症度が様々であるため生じたβエラー*² も懸念されている。
このため、心肺停止後の臨床転帰を改善するためには、蘇生後脳症の重症度評価を開発し、脳障害の重症度に基づく新しい蘇生後ケアを創造していくことが不可欠である。
本セッションでは前半部分でTTM に対する研究群について概説し、今後の展望を述べたうえで、後半部分において、これから蘇生後ケアの充実を図りたいと考える施設向けに具体的なプロトコルを示しつつその作成過程を伝えていきたいと考えている。
*1:TTM:Targeted Temperature Management; 体温管理療法
*2:本当は差があるにも関わらず、仮説検定を実施した結果、差があるとは言えないと誤って判断されること