座長:笠井 正志 先生 兵庫県立こども病院 感染症内科
演者:伊藤 健太 先生 あいち小児保健医療総合センター 総合診療科
演者:伊藤 雄介 先生 兵庫県立尼崎総合医療センター 小児救急集中治療科・小児感染症内科
抄録
目が覚めると雄介は柔らかい肌色の地面に横たわっていた。眼前には大きな大きな透明の管が横たわっていて、中身は透明の液体で満たされている。思うように動かない身体をくねらせながらその管に沿って行くと管が地面にめり込んでいるのが見えた。さらにその先の地中を潜っていくと、赤い液体が流れる川に到達した。少し鉄っぽい臭いが鼻につく。
雄介「あれっこれって血?」
雄介「そうだよ」
雄介「お前そんなこともわかんないのかよ!」
雄介「??なんで自分に自分が答えてるんだ??」
不思議に思った雄介が横を向くと自分そっくりの丸い顔をした、いや、顔じゃない、全身のフォルムが球状の、自分がぶどうの房のように連なっていている。一部は今にも分裂しようとすらしている。
雄介「あれ?オレ、なんか黄色ブドウ球菌みたいだな‥」
健子「そうよ」
雄介「うわっ、な、何だ?誰だ?あんた?俺はいったいどうしちまったんだ?」
健子「あなたはPICUでの感染症診療にのめり込みすぎて時空の歪みに迷い込んでしまったの?」
雄介「時空の歪み?」
健子「そう、時空の歪み的な何か。そして、なんやかんやあって、今あなたは黄色ブドウ球菌に転生しちゃったのよ!」
雄介「転生?ど、どういうことだ?オレは元の世界に戻れるのか?」
健子「私は、PICUの感染症管理女神の健子。あなたが元の世界に戻るにはPICUに迷い込んでる他の菌たちを集めて医療関連感染を起こさないように改心させる必要があるわ。たぶんそれで戻れる気がしないでもないわ。」
雄介「何ー!今年の伊藤家の昼食卓は異世界転生モノだったのかぁぁ!」
ということで、今年は医療関連感染を起こしやすい気になる菌たちについて楽しく学ぶ時間です。