細菌検査室のスタッフ(後列右が藏前氏)
臨床側への血液培養陽性時の結果報告のタイミングはいくつかある。まず塗抹検査の結果判明時点。細菌検査室から主治医に電話で結果を伝え、菌同定時に再度、電話報告する必要があるかどうかを話し合って決める。菌名は不要で感受性試験の結果が必要な症例では次の電話報告は翌朝になる。
結果報告について藏前氏は「かなりのスキルが求められる」と指摘する。そのため技師教育の仕組みを構築し、配属2年目に日本臨床検査同学院の二級臨床検査士、その後、認定臨床微生物検査技師の資格取得を推奨。県内の認定者37人(昨年1月時点)のうち3人が同病院の技師という。
塗抹検査の結果報告を前に各検査技師は、電子カルテを閲覧して患者背景や診療情報などを確認。主治医とのディスカッションに臨む。菌の属性や菌名の目安にとどまらず、薬剤選択について臨床医と討議することもあるという。
主治医に電話で口頭報告する一方、感染管理看護師(ICN)に対しては、細菌検査情報システムの端末画面のハードコピーを手渡しして報告する。ハードコピーを使うのは、口頭報告で起こりがちな誤認を避けつつ、検査室側の新たな入力作業を避けるためだという。
さらに、病棟看護師には菌名が判明した時点で連絡する。その際は、細菌検査情報システムの追加機能を使って病棟にファクスを送る。ファクスなら呼び出し音が鳴るため、到着に気付いてもらえ、印刷物が誰にも気付かれないままプリンターのトレーに放置される事態が避けられる。電話は確実に連絡できるが、多忙な病棟看護師の仕事の手を止めさせることになり、医療事故を誘発しやすい事態を招く。そのリスクを回避しつつ、確実に結果を伝える工夫がファクスの活用なのだという。
早期治療開始が必要な主治医には電話、感染制御を受け持つICNには画面ハードコピー、患者管理を行う病棟看護師にはファクスと、それぞれにふさわしい連絡手段を組み合わせて3つの方向に血液培養陽性症例の結果報告が行き渡る。藏前氏は、「治療する人(医師)と、感染管理する人(ICN)、患者をケアする人(病棟看護師)はそれぞれ方向性が違っていて、求めている情報、出すタイミング、伝え方が変わってきます」と説明する。