康氏
—検体検査の分野では、検体の搬送から検査までの自動化が非常に進んでいるとお聞きしています。
康氏 日本は、臨床検査の自動化に関して、昔から現在に至るまで先頭を走っています。細菌検査も世界の先頭を走るべきであり、その能力があると思います。
ノーベル賞を取られた田中耕一先生が開発されたTOFMS(飛行時間型質量分析法)技術が細菌同定検査に応用され、菌の同定に関して革命的な変化が起こっています。
細菌検査の自動化には、起炎菌をどのように同定するか、培養法をどのように選択するかといった細菌検査の他のステップにおいても本当のイノベーションを開発していかなければなりません。新しい技術的なイノベーションが起こってくると、人間にさらに新しい専門性が求められてきます。イノベーションを恐れる理由は、検査の世界ではまったくありません。
自動化学会は、産業とアカデミアの連携で発展してきた学会です。この学会に参加されている皆さんは、耐性菌を減らして最終的に撲滅させることに対して、非常に高い意識をお持ちです。
—「あなたのリスク、ほどよいクスリ」という標語があります。薬を創っても耐性菌が出るという問題はどうしたらいいでしょうか。
舘田氏 ビジネスという視点では、新しい薬を開発し、それを続けることが難しい状況があります。これは日本だけでなく、世界的に見てもそのような問題があります。
日本は、世界標準の抗菌薬をたくさん開発してきた国ですから、ある意味ノウハウを持っていて、人的なリソースもたくさんあります。それを生かして世界に貢献できるような、そのような方向性を持っていくべきでしょう。
一方、以前の病院は、院内感染が起こるとなかなかオープンにできませんでした。院内感染がなかなか表に出ませんでしたが、今は、早く見つけてオープンにするといったパラダイムシフトが起こっています。
—日本はますます高齢化社会になっています。
康氏 抗菌薬がどんどん使われ、医療費の増大とともに、耐性菌の問題が生じています。しかし、医師も医療技術者も大変忙しく、目の前の課題に追われています。ワンヘルスの視点で、地球環境を守るための医療が大切であるということを常に訴えていくことが非常に大切です。
—AMRを含めて、今後、期待されることは。
康氏 検査技師もサイエンスに貢献しなければいけないということで支援してきました。幸い多くの検査技師がいろいろな研究により博士号を取るようになりました。これは止めることのできない流れです。
自動化学会は、今年、「細菌検査感染症委員会」を立ち上げました。自動化学会大会に参加している皆さんも積極的にサポートしていただき、耐性菌を減らすために自動化学会が大きく貢献していきます。
舘田氏 この4月に感染症学会の理事長になりました。学会の大事なテーマの一つとして、学際化の推進を掲げています。感染症は、グローバルな視点で考えていかなければなりません。感染症学会だけで収まるものではなく、いろいろな分野の先生方、さらに獣医師、薬学、理学そういった方々との連携をさらに強めていきたいと考えています。その中で特に重要な領域として検査領域を考えています。今後は、感染症学会と自動化学会がさらに連携を深めながら、AMR問題に対して対策を進めていきます。