Q 感染対策において、薬剤師は院内でどのような役割を担っておられますか。
薬剤部では、患者様の検査データや医師の処方薬に関する情報をリアルタイムにWeb上でチェックできます。薬剤師はWeb上の画面を随時確認し、この検査データのとき、この処方薬で本当に良いのかなどを検証しています。例えば、細菌検査データの再確認が必要であれば、細菌検査室に電話をかけて、臨床検査技師に検査結果を問い合わせることもあります。一方、医師が処方した薬でも、検査データ等から強力な抗菌薬を使用すべきでなかったり、高額な抗菌薬を使用する必要がなかったりする場合には、薬剤師が処方医に対し処方薬の変更を提案することもあります。また、薬剤部に集まる感染対策上重要なさまざまな情報を元に、MRSAやESBL※ 等の発生警報を、メールで迅速に発信することも行っています。
※Extended Spectrum beβta)( Lactamas(e基質特異性拡張型βラクタマーゼ) の略 Ignazzo創刊号I's eyeに掲載。
Q 薬剤師が他の感染対策スタッフと医師を結ぶハブ的な機能を担い、また情報を薬剤部に集中させることで、迅速で的確な対策を打てるシステムが出来上がっているのですね。
そうですね。薬剤師は、検査データに基づき、薬剤の価格も含めてフラットで偏りのない情報をもって、医師に対して処方設計を提案できる立場にあるのではないかと考えています。抗菌薬だけではありませんが、当院の場合、薬剤に関する疑義照会は月間約 1000件に上り、このうち処方変更・中止は約100件あります。
2005年末には、疑義照会の内容や服薬情報提供文書を、電子カルテ上に記入したり、PDF形式のファイルで添付するという独自のシステムを完成し、医師と薬剤師の間で必要な情報提供をスムーズに行える環境を整えました。そして、各部署の医療関係スタッフに適正な情報を提供するため、当院薬剤部ではDI( Drug Information)室が独立した組織として機能し、3人の専任の薬剤師を配置しています。また大切なことは、薬剤部への情報要求に対して迅速に回答するだけでなく、その後の転帰を必ず確認することです。そのような地道なコミュニケーションが、医師との信頼関係の構築につながっていると考えています。