柴谷先生は看護ケア推進室に属する専任ICNとして、感染予防策実践を推
進するために、リンクナースや看護職員に対しどのように教育的にかかわっているかを具体的に講演されました。
まず、2004年度のICNの年間の活動をみると、サーベイランス(30%)に次いで教育(13%)に力を注いでいることと示されました。教育の実際に関しては、出席率が低く受講者の知識レベルや職場の特性にもばらつきがある集合教育だけでは効果的な感染対策を実現するには限界があることから、感染対策の要となるリンクナースを育成し状況に即したOJT(現場教育)を可能にすることの重要性を強調されました。
リンクナースに期待される役割としては、
・感染対策マニュアルにのっとった感染予防策が実践できるようスタッフを指導する
・ICCおよびICTにおける決定事項を周知徹底する
・所属部署の感染管理にかかわる問題点を発見し、ICNと相談しながら対処する
・リンクドクターと協力して感染制御活動を推進する
があげられ、リンクナースを養成するために実施している、リンクナース予備軍であるスタッフナースを対象とした「感染管理コース」の実施とコース終了後に行うフォローアップ面接による教育効果について具体的に報告されました。
2002年度から開講した「感染管理コース」は、看護部教育委員会が主催しICNが担当する年8回コースで、「所属部署において役割モデルとなり、感染管理活動を実践推進できる人材育成」を目的とし、クリニカルラダーレベル3以上の希望者を対象に毎年15名前後が受講します(表1参照)。
柴谷先生は、これまでのコースの実践と評価からリンクナースおよびスタッフナースへの効果と課題を明確にし、課題に対する取り組みとして、ケーススタディの実施とスタッフナースに対するコース終了後のフォローアップ面接の実施を紹介されました。すべてスタッフナース(12名)が受講した05年度の感染管理コースでは、ケーススタディとしてインフルエンザ発生時の対応を盛り込む実践的な内容とし、コース終了後にリンクナースも同席した面接の結果、スタッフナースのモチベーションアップが図られ、次の3つの取り組みの成果が示されました。
(1) 集合教育に加えてOJTが効果的である
(2) ICNによるフォローアップ面接の効果
(3) 学習の成果を現場活用できる
最後に、リンクナースの相談者としてもICNがタイミングよく教育的役割を遂行できるための専任化や、時間の確保など組織的対応が不可欠との認識が強調されました。看護職の感染対策の資質向上が医師をはじめとした医療スタッフに与える影響の大きさを指摘し「結果としてチーム活動の活性化につながる」と述べられました。