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職業感染対策としてのワクチンプログラム

2006年10月発行
掲載内容は、情報誌「Ignazzo(イグナッソ)」発行時点の情報です。

主な職業感染対策ワクチンプログラム

 医療従事者をはじめ、病院内で業務を請け負う職種、実習生、研修者等は、B型肝炎、麻疹、風疹、水痘、流行性耳下腺炎、インフルエンザ等のウイルス抗体価検査を行うとともに、率先してワクチン接種することが望ましいとされています1)。特に曝露頻度が高いHBVの職業感染対策は、曝露後ではなく、病院就職や病院実習前のワクチン接種から始まります。

曝露前HBV ワクチン接種の重要性

職業感染の危険性が最も高い曝露は針刺し損傷です。しかし、HBVは室温で環境表面の乾燥血液中で少なくとも1週間は感染力があるため気付かないうちに、 HBV感染は環境表面に付着していたHBVが皮膚の傷などから体内に入り込んで感染が成立している可能性があります。従って、血液体液に接触する可能性のある医療従事者はワクチン接種によって抗体を獲得しておく必要があります<sup>2)</sup>。

曝露前HBV ワクチン接種の対象者

  米国では平成3年にOSHA(労働安全衛生管理局)が公布したBloodborne Pathogens Standard(血液媒介病原体に関する基準)においてHBVワクチンプログラムの遵守が定められました。これにより、HBVワクチン接種は無償で、労働者が教育訓練を受けた後および職業的曝露を伴う業務に就いてから10日以内に行わなければならないと規制されています3)

 一方日本では、HBVワクチン接種を実施していない(17%)、もしくは自己負担としている(8.5%)医療機関があり、HBVワクチン接種の不徹底が問題視されています4)
 またWHO(世界保健機関)は、HBVワクチンをEPIワクチンに準ずるワクチンとして重要視しており、母親のHB抗原の有無にかかわりなく、全新生児に接種している国も多くあります。
 職業感染対策としてのHBVワクチン接種対象者は、少なくとも医師・看護師・臨床検査技師があげられますが、その他の職種においても、リスクに応じて判断される必要があります。

HBV ワクチンプログラム

HBVワクチンは、これまで局所反応の他にはほとんど副反応の報告はなく、母子感染の防止あるいは医療従事者等のハイリスク者の感染防止を目的に使用されています。
 ワクチンプログラムは、1コース3回接種(初回、1カ月後、6カ月後)で、第1コースに充分な抗体価が得られない人(HBs 抗体<10mIU/mL)はHBs抗原陰性を確認して、第2コースを実施する。第1コースで抗体が獲得できなかった人が第2コースで獲得できる可能性は 30〜50%といわれています。ワクチンが開発された当時に行われた治験では、プログラムに従ってワクチンを接種した場合のHBs抗体獲得率は95%を超えるという成績が得られています。
なお、HBワクチンは、有効成分を液相に浮遊させたものですので、使用するにあたり必ず十分に振って沈殿している有効成分をあらかじめ浮遊させることが大切です。HBワクチンを接種しても有効でなかった(HBs抗体獲得率の低い)ケースを調べると、使用前に十分に振らなかったために、上清のみを接種している場合がよくみられることから注意が必要5)
1)医政指発第0201004号平成17年2月1日「医療施設における院内感染の防止について」別添 平成15年度厚生労働科学研究費補助金(厚生労働科学特別研究事業)分担研究報告書 国、自治体を含めた院内感染対策全体の制度設計に関する緊急特別研究 「医療施設における院内感染(病院感染)の防止について」
2)CDC MMWR Recommendations and Reports June 29, 2001 / 50(RR11);1 -42
3)U.S.Department of Labor Occupational Safety & Health Administration Regulatio(nsS tandards - 29 CF)R Bloodborne pathogens. - 1910.1030  www.osha.gov
4)厚生労働科学研究費補助金厚生労働科学特別事業「医療従事者の針刺し・切創の実態とその対策に関する調査」平成14年度研究報告書
5)B型肝炎について(一般的なQ&A)平成16年3月作成
 <作成>厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/


(文責: 日本BD 細見由美子)

※EPI:Expanded Program on Immunizat、ioWnHOが中心となり決定している世界規模で小児に対して優先的に接種するワクチン6種