図3:血液培養数の増加
Q:血液培養数が多いとのことですが、今後も増えていくのでしょうか?
藤本:当院での血液培養数は1999 年は1,109件でしたが、2009年は6,751件となりました(図3)。
注目すべきは、血液培養数が増えていても、陽性率が11〜13%で安定しているということです。不要な血液培養が増えているのではなく、必要な検体数がそれだけあるということがわかります。血液培養は、適切な件数に近づくまだ途中にあると考えています。
Q:医師と細菌検査室の連携の一環として、後期研修医の細菌検査室研修という取り組みが行われているとお聞きしましたが、どのような研修ですか。
藤本:当院では、総合内科の後期研修医のプログラムに、1週間の細菌検査室での研修を組み込んでいます。細菌検査の業務はとても奥が深いため、1週間ですべてを学ぶことはできませんが、臨床で医師が必要とする知識を得るためには十分な期間だと思います。後期研修医には、細菌検査室での研修を通して、検査がどのような過程を踏んで進んでいるのか、各過程でどのような情報が得られ、どのような落とし穴があるかを理解してもらいます。
様々な症例の窓口となる総合内科に、細菌検査室での研修を終えた医師が数名いれば、診療のレベルが上がります。臨床医と細菌検査室が日常診療のコミュニケーションを取るだけでなく、後期研修医の細菌検査室研修を続けていけば、病院全体の連携が強まり、感染対策が適切に行えるようになるでしょう。
平島:細菌検査室での研修では、単にグラム染色の結果を見るだけでなく、培養2日目、3日目のコロニーなど、検査途中の情報を確認することができます。研修を受ける中で、培養途中のコロニーから推定される菌、あるいは起因菌とは考えにくい菌を除外するための項目も理解でき、臨床で使える細菌同定の知識が深まります。そのため、選択する抗菌薬を決めるための確かな情報を増やすこともできます。細菌検査室での研修を終えて思うのは、細菌検査室と培養途中の情報を十分にやりとりすれば感染症治療を行う上で常に抱いている不安を減らすことができるということです。細菌検査室との連携が確立していれば、感染症治療を安心して行うことができます。
研修が終わった現在でも、可能な限り細菌検査室に足を運んで培養から得られる情報を教えてもらっています。報告書に記載される結果以外の情報が得られることも多く、臨床と細菌検査室との連携は非常に重要であると感じています。