図6) 沢水および浄水設備を利用した生活用水の確保
宮城県疾病・感染症対策室および地域保健所の保健師、石巻地区では石巻赤十字病院や石巻市立病院のICN とともに、感染症対策の観点から、現状評価と改善支援をおこなった。
避難所では体育館やホールなどにおける近接した距離で多数が居住していることから、換気は積極的に行われているものの、パーテーション等の間仕切りの設置は少なく、呼吸器感染症の伝播リスクは高いと考えられた。
避難者の感染症予防に関する意識は高く、また巡回医療団や行政職員・保健福祉担当者等の多大な尽力により、体調把握やインフルエンザ迅速診断の積極的な実施による飛沫感染予防策、体調管理等を行うことができていた。
上下水道が損壊した地域が多く、給水車による飲用水の確保は可能であるものの、下水設備が損壊している場合は排水ができないため上水を用いることができず、手洗い、清掃、食品衛生のための十分な水の確保は困難であった。避難所の衛生環境は、上下水道の復旧、郡部では沢水の活用に伴い大きく改善する傾向があり、被災時においては簡易上水設備や浄化槽の整備が重要であることが考えられた(図6)。
速乾性アルコール手指消毒薬やマスクは十分量供給がされているものの、その使用状況については継続的な啓発が必要であるとともに、使用量の把握は困難であった。次亜塩素酸ナトリウムやアルコール含有テッシュ等の清掃用品、埃の少ないウレタン製マットレス、食材の確保と管理状況など、各種物品のより積極的な調達や衛生環境の確保は、自治の状況や経験者の有無に依存し、日頃の自治会組織を有する小規模避難所では、よりコミュニケーションが取りやすいことがみられた。
また、インフルエンザ等の発症事例等もあり、支援者に対する感染症・感染症対策に関する啓発が必要と考えられた。