図11 総注射機会回数における実施者・内容別割合
図12 看護師の該当器材による注射実施割合の高い病棟(トップ5)
(図11、12 引用:第16 回日本糖尿病教育・看護学会学術集会発表資料)
・病院におけるペン型注入器によるインスリン注射の問題点は、本来在宅患者が自己注射することを目的とした安全機能のついていない注入器を、患者教育上やインスリン単位の間違いを防止するために医療従事者(看護師)も使用している点にある。
・原則的に考えると、本来自己注射目的であっても、高齢や病状の変化によって家族にゆだねる状況もあり、針刺し防止機構がなくてよいというものではない。
・糖尿病の教育入院ではペン型注入器による注射の実施者は主に患者になるが、いわゆるシックデイとして、糖尿病患者が入院する場合は、看護師が実施または介助する割合が高くなる場合がある。
・当院で 2010 年11 月24 日~ 12 月7 日の2 週間に一般病棟(796 床)におけるペン型インスリン注入器による注射を実施している糖尿病患者130 名の調査をした結果、患者の実施割合は53.0%、看護師の実施割合は35.8%、看護師の介助・指導割合は11.2%であった(図11)。
・この結果を 10 万本あたりの針刺し損傷リスクで考えると、当院の場合、使用されている(あるいは出庫されている)ペン型インスリン注入器用注射針の35.8%を看護師が使用しているため、それに合わせて母数を補正すると、2.79 倍高くなった。
・使用病棟において看護師の実施割合を比較すると、主に教育入院が多い糖尿病内科病棟より外科病棟の方が3 倍~ 7 倍と著明に多い傾向にあった(図12)。
・先に述べた病院におけるペン型注入器によるインスリン注射の問題に加え、近年、糖尿病患者の増加に伴い、インスリン注射針の流通量が増加している。そのことが、安全機能付き器材が普及していないこととあいまってインスリン注射針による針刺しが増加するという連鎖がある。日本では、2012 年5 月時点で、1社からペン型注入器用安全機能付きインスリン注射針が販売されているが、その器材の臨床使用評価が待たれるところである。