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神戸大学医学部附属病院 看護部・感染制御部 李 宗子 先生 はじめに 1.全国エピネット日本版A2013 サーベイランスおよびアンケート調査結果抜粋より 2.手術部領域の針刺し・切創、皮膚・粘膜曝露の疫学と予防対策 3.エピネット日本版手術部版およびEpisys301の開発について 4.今後の課題 1. 全国エピネット日本版A2013 サーベイランス結果およびアンケート調査結果抜粋より
既にイグナッソVol.7、Vol.9で紹介のあった、職業感染制御研究会では、その後も、針刺し切創サーベイランスツール(エピネット日本版およびエピシス)の開発と普及が進んでおり、2014年現在エピネット日本版は国内の約1,500以上の医療機関等で利用されている。
最新データとしては、2013年12月に全国エイズ拠点病院より収集されたJES2013提出データAの6,167件(87施設)を含む1996年度以降の計57,1673件のデータをデータベース化し、新たに開発されたEpisys301 等で解析した結果を、1996~1999年度、2000~2003年度、2004~2008年度、2009~2010年度、2011~2012年度の5時期で比較し、経時的な状況変化をまとめている。 また、同上の施設で2004年度(229施設)、2008年度(112施設)、2010年度(75施設)、2012年度(89施設)にアンケート調査した内容(施設調査)も一部附記する。これらはすでに職業感染制御研究会ホームページURL:http://jrgoicp.umin.ac.jp/ で公開されているので是非ご参照頂きたい。 注)調査結果の限界 ・ 集計された事例は、曝露事例の一部である。(未報告の可能性がある。) ・ 各病院において、未報告事例や報告されてもエピネット日本版に入力してい ない事例があると考えられる。 ・ この集計は度数の集計であり、リスク分析ではない。 1) 全国エピネット日本版A2013 サーベイランス結果抜粋● 針刺し・切創の発生場所は、病室(30.8%)・手術部(28.5%)・病室外(9.8%)で全体の7 割を占める。病室および病室外の針刺しの割合が減少傾向にある半面、手術部の割合が増加傾向にある(図1)。手術部での針刺し切創・血液体液曝露については、手術部特有の発生状況を詳細に把握するためのサーベイランスソフトのニーズが年々高まっていることを踏まえ、2013年9月にエピネット日本版手術部版および対応する入力解析ソフトEpisys301がリリースされた(この詳細については後述)。 ● 針刺し・切創の発生状況では、使用中が最も多く(28.1%)、廃棄容器関連の受傷(15%)、数段階処置中(11 %)、リキャップ時(8.6%)、器材の分解時(8.1%)、使用後廃棄まで(7.3%)の順となっている。しかし、「リキャップ」「使用後廃棄まで」による針刺しが全体に占める割合は減少傾向が続いており、使用中、器材の分解時、廃棄容器関連の針刺しの割合が増加傾向である(図2) ● 針刺し・切創原因器材をみると、5大原因器材は、「使い捨て注射針」「縫合針」「翼状針」「薬剤充填式注射針」「静脈留置針」であるが、「薬剤充填式注射針(インスリン関連)」による針刺しが依然増加傾向にある一方、「翼状針」は減少傾向にある。5大原因器材以外では、「ディスポ外科用メス」「血液ガス専用注射針」の割合が増加している一方、「接続針」「ランセット」「剃刀・刃」の割合は近年減少傾向に転化している(図3)。 2) アンケート調査結果 抜粋● 単なる針刺し報告件数だけではなく、針刺し報告率の指標として用いられるHCV陽性の針刺し割合の推移をみると、2004年度と2010年度では大学病院・大学病院以外ともにHCV針刺し割合の減少が見られ(P<0.01)、報告率が増加していると示唆されたが、2010年度と2012年度ではあまり変化が見られなかった。ただし、2010年度から2012年度の変化を大学病院と大学病院以外の各々みてみると、大学病院でHCV針刺し割合の減少傾向(0.6ポイント減)、大学病院以外では増加傾向(0.6ポイント増)が見られた。このことから、大学病院以外では報告率が増加したことにより報告件数が増加した可能性も考えられる。(図5) ● 2010年度、2012年度の調査施設全体の針刺し発生頻度を、職種別針刺し発生頻度でみると、各職種のフルタイム100名あたりで最も高い職種は、両年度とも研修医であった。2012年度は14.4件と2010年度より増加しており、次に歯科研修医の7.4件、医師の4.6件の順であった。2012年度は助産師の針刺し発生率が3.9 件と2010 年度よりも大きく増加し、看護師および臨床検査技師よりも発生率が高くなっていた(図6)。 ● 安全器材導入状況は、前回(イグナッソvol.9)に報告した2004年度以降、経年経過を見るとほぼ全種類の器材導入が増加傾向だったが、注射針に関しては依然導入が進まず、2012年度においても大学病院では12.5%、大学病院以外では10.7%と、いずれも低い導入率となっている。一方、10万本使用器材あたりの針刺し発生頻度が高く近年問題視されていたペン型インスリン自己注射針については、本邦でもこの年にようやく安全器材が販売されたこともあり、大学病院では21.9%、大学病院以外では19.6% と一気に導入が進んでいる(図7)。 ● 2012年度の器材別10万本使用器材あたりの針刺し発生頻度についてみると、安全器材導入が最も多かった翼状針と静脈留置針は各々5.8件、2.7件と開きがあった。この差はどこに問題があるのか、エピネットデータを詳細に解析し、具体的な発生状況と原因となった安全器材の安全機構の特性も考慮して検討する必要がある(図8)。 ● さらに、翼状針、静脈留置針、注射針、縫合針の4器材において、発生した針刺しが安全器材によるものだったのか、非安全器材によるものだったのかの割合を見た。特に、先に述べた安全器材導入状況で98%~ 100% と報告された翼状針、静脈留置針を比べると、安全器材による針刺しが、各々9割と5割弱と大きな開きがあった。特に翼状針については安全器材による針刺しが9割と高率であることから、原因となった安全器材の安全機構と使用方法の詳細を把握する必要があると考えられる。ただし、施設調査においては、施設内で安全器材に100%切り替わっていない「部分導入」でも「導入」との回答でとっているため、静脈留置針については、「導入」と回答された医療機関内においても実際の切り替え率の割合が低いため、非安全器材による針刺し割合が多い可能性がある(図9)。 2. 手術部領域の針刺し・切創、皮膚・粘膜曝露の疫学と予防対策● 手術室における主な針刺し・切創原因器材をみると、1996年以降、縫合針の割合が5割以上で最も多く、その次に注射針が多く報告されている。また、原因器材割合の推移をみると、縫合針の割合が少しずつ減少しており、ディスポーザブル外科用メスや再生使用外科用メス、レトラクター・スキンフック・ボーンフック等の手術部特有の器材の割合が増加傾向にある(図11)。 ● 2011年度~2012年度の手術室での4大原因器材別の針刺し発生状況を見ると、器材によって発生のメカニズムが異なることがわかる。(図12)。縫合針では「患者に使用中」の針刺し切創が全体の半分を占めるが、ディスポメスや再生使用メスでは「数段階の処置操作間(数回の注射の合間や器材を受け渡し時など)」に多く発生しており、フリーコメントを確認すると器材受け渡し時の発生が多く報告されている。注射針ではリキャップ時の針刺しが16%を占め、これは器材全体のリキャップ時の針刺し割合の9%(図2)に比べると非常に多く、手術部における「リキャップ禁止」の徹底とその具体的対策の必要性が示唆される。 ● 手術室での器材受け渡し時の針刺し・切創対策のひとつとして、「ハンズフリーテクニック」があげられる。本年度の施設調査ではその実施状況について回答を得た。その結果、全手術において実施している施設は17施設で全体の19%であった。特定手術のみ実施、感染症特定・未検査手術のみ実施、感染症特定手術のみ実施の施設が36施設で全体の41%、実施していない施設が35施設で全体の40%であった(図13)。 ● ハンズフリーテクニックを実施していない施設ではその理由として、直接の手渡しが原因の刺傷はまれと思っている、医師に協力が得られない(特に熟練医師)、技術上困難、立ち位置、術野から目がはなせない、ニュートラルゾーンエリアを確保できないなどのコメントが記載されていた。手術部における針刺し切創対策では、一般病棟における対策に比べて、いわゆる作業的アプローチの部分が多く、ハンズフリーテクニックも近年の手術方法を考慮した検討すべき課題と考えられる。 3. エピネット日本版手術部版およびEpisys301 の開発について1994年、米国では、AORN(手術室看護師協会)とバージニア大学の協同研究が開始され、EPINet™を手術部特有の環境や実態を把握できるように改訂したEPINetTMOR が完成され限定的に使用されている。本邦では1996年度以降集積されたエピネット日本版の手術部における血液体液曝露データの内容を反映させ、日本の医療現場に適合したサーベイランスツールとして「エピネット日本版手術部版」が完成された(本誌付録に報告用紙掲載、図14)。 針刺し・切創ならびに血液体液汚染の報告書の基本的構成は、エピネット手術部版も同様である。しかし、発生場所が手術部に限定されるという点で、手術部特有の実態が把握できるよう同じ設問であっても回答項目が変更されたり、新たに追加されたりしている項目がある。最も針刺しの多い縫合針の種類など、手術部に特異的な外科器械や外科的テクニックを把握する項目や、針刺し・切創が起きた時に器材が手渡しされていたのか、ハンズフリーだったのかなど特異的な予防策を評価し得る項目が追加されている。 エピネット日本版「手術部版」の開発に伴い改訂リリースされた入力解析システム「Episys301(エピシス301)」は、下記のすべての報告書に対応し、従来から使用されているエピネット日本版「一般」で入力されたデータのうち発生場所が「手術部」の報告は、「手術部報告」に変更可能となっている(逆も可能)。 また、報告書式の項目が異なる設問については、自動記載として互換性を持たせ、得られた情報が有効に活用できるようになっている(参考:図15)。 EpisysA301 対応報告書: エピネット日本版Ver4 針刺し・切創報告書 エピネット日本版/ 手術部版Ver1.0 針刺し・切創報告書 EpisysB301 対応報告書: エピネット日本版Ver4 皮膚・粘膜汚染報告書 エピネット日本版/ 手術部版Ver1.0 皮膚・粘膜汚染報告書 |