起炎菌としてはMRSAが最も多く、次いで緑膿菌が続く。患者背景は術後の患者、次いで新生児が多い。また、転帰に関しては死亡が最も多く、次いで後遺症の残存が多い傾向にある。
感染症に関連する医療訴訟の争点としては、感染の予防に係る内容と感染後の対応・対策に係る内容の2つに大きく分かれる。
感染の予防に係る内容には、医療機関としての感染対策と医療者個人の感染対策、特に清潔操作等があげられる。
医療機関の感染対策としては、以下の内容等が争点になる。
・ 院内感染対策委員会が定期的に開催されている
・ 院内感染対策マニュアルを策定し、各種感染予防策を整備し、適宜見直している
・ 感染予防策の教育も頻回に行われている
これらの記録を保存しておく必要性は言うまでもない。医療者個人の感染対策としては、特に清潔対策の内容等が争点になる。医療行為の前に十分な手指消毒をしているかの記録化は困難である。医療者個人の清潔操作に疑念を持たれたとしても、自信を持って普段から清潔操作を行っていると主張するしかないが、そのためにはいつも同じように清潔操作を行い続けることが重要となる。
感染後の対応・対策としては、検査の実施状況や抗菌薬の選択等が争点になる。抗菌薬の選択等の医療行為が診療ガイドライン等に沿っているかどうかの検証がなされる。
医療訴訟は医療機関側の過失に基づいて行われる場合より、患者側の医療機関への不信感から行われる傾向が高いと思われる。日頃から感染症診療、感染症対策に自信を持って適切なことを行い、患者に対しても適切に説明を行うことが重要と考える。また、訴訟が起こされたとしても裁判所に対して適切な医療をしていると堂々と主張できるようにしておくことが重要と考える。
(文責:日本BD 天野 泰彦)