表1 CREの検出基準
Q2 2014~15年のCREアウトブレイクの概要をお聞かせください。
松田 2014年9月に病棟患者の喀痰、便、気管チューブからメタロβラクタマーゼ(MBL)産生型CREが検出され、この時点では発生病棟と菌株が異なっていたためにCREアウトブレイクとは判断できませんでした。当時のわが国はCREの脅威を海外ほど強く認識していなかったことも背景にあると言えるでしょう。
同年末にCREアウトブレイクが示唆され、折しも同時期(2014年9月)に厚生労働省がCREを5類感染症として判定基準を定めており(表1)、当院もこの基準に則ってCREを検出し、カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)かどうかの追加試験を行って、毎朝のICT会議に報告することにしました。すべての病棟患者とNICU/GCUの患児に咽頭・鼻腔・便からのスクリーニングを行い、CREを複数検出したことで保健所に報告しました。
NICUとGCUでの検出が16人と高かったことで
*、翌2015年2月にNICU/GCUの新規患児の受け入れを中止しました。長崎県の周産期医療は当院に大きく依存しており、新生児の命が危険にさらされるリスクがありましたが、当院はCREアウトブレイクを重く捉えてこの決断を下しました。
患児がすべて退室した3月末にNICU/GCUの消毒・清掃、ゾーニングの見直しからの改修工事を行いました。同時に手指衛生の徹底など40項目以上におよぶ改善策に取り組み、外部の感染対策専門家、周産期医療にかかわる医師、弁護士などが構成する第三者委員会の協力も仰いだことで、1ヵ月半後の4月中旬にはNICU/GCUともに受け入れを再開しました。
栁原 海外ではCREの脅威に対して警鐘が鳴らされていましたが、当時のわが国ではまだ一般的に知られていなかったことで、決断と行動に多少時間がかかったことは否めません。また、受け入れ中止は周産期に関わる周辺の施設に多大な負担をかけてしまい、メディアに報道されたことでも患者さんと関係者にご心配をおかけしました。1ヵ月半で再開できましたが、もしも事態が数ヵ月間続けば、その影響は甚大なものになっていたでしょう。
*新生児16人のうち感染症として2人を届け出ており、2人はいずれも全快している。他の14人は感染症を発症していない。