Q1臨床現場では、AMRをめぐって何が起きているとお考えでしょうか。
今後、耐性菌の広がりや増加は十分に起こり得ると考えています。ウイルス感染の初期段階では基本的に細菌性の感染の関与はほとんどありませんが、長期化することで二次性の細菌性肺炎が混在してくる場合があります。新型コロナウイルス感染症肺炎は症状が多様であり、ウイルス感染との鑑別が困難な細菌性肺炎の合併が疑われる所見がみられることもあります。こうした症例では、細菌感染の合併がさらなる症状の悪化を来す可能性が考えられるため、抗菌薬を投与せざるを得ません。抗菌薬の使用頻度の増加や長期間の投与は、結果的に緑膿菌やアシネトバクターなどの耐性度が高い細菌による感染リスクを高め、それらが原因で亡くなる場合もあります。治療する側は細菌性肺炎を合併する可能性について注意を怠らないようにしなければいけませんが、その反面、耐性菌のリスクも踏まえて抗菌薬投与の是非や薬剤選択を慎重に行う必要があります。現在、本邦では外来を受診する患者の減少により全体として抗菌薬の使用量は減ってきています。しかしながら、新型コロナウイルス感染症患者が減少し、多くの病院が以前の体制になるべく早く戻そうとして動き始めると 、今後は外来・入院を含めて抗菌薬の処方が再び増加することが予測されます。