1. 抗菌薬投与前の実施事項
CRE感染症の治療において、どの抗菌薬を選択するかというのは重要な課題であると考えられる。ただし、治療に入る前に、分離されたCREが単なる保菌ではなく、感染症の原因菌となっているかを見極める必要がある。また、感染源のコントロールが適切に行われているかどうかも確認すべきである。すなわち、カテーテルなどの体内異物、膿瘍や壊死組織の存在下ではいくら有効と考えられる抗菌薬を投与したとしても十分な効果を期待することは困難であるため、体内異物の除去やドレナージ、デブリドマンなども必要に応じて実施する必要がある。
2. 抗菌薬の選択
CPEでないCREを対象として治療を行う場合、カルバペネムの耐性度がそれほど高くない場合はカルバペネムの増量や他の薬剤との併用により有効性を示す場合もある。その場合、分離された菌の薬剤感受性結果を基に感受性が良好な抗菌薬を併用薬として選択する。例えば、β-ラクタム抗菌薬以外のアミノグリコシド系抗菌薬やキノロン系抗菌薬などが選択されることが多い。他にβ-ラクタマーゼ阻害薬配合抗菌薬のタゾバムタム・ピペラシリンやタゾバクタム・セフトロザンがそれぞれ単独あるいは他の系統の抗菌薬との併用で有効な場合もある。コリスチンやチゲサイクリンも選択肢となるが、副作用や有効性の点において優先的に使用すべき抗菌薬とは言えない。
CPEによる感染症に対しては、カルバペネマーゼの種類によって投与すべき抗菌薬を選択していく必要がある
7, 8, 9)(表3)。KPCなどクラスAに分類されるカルバペネマーゼ産生菌に対しては、レレバクタム・イミペネム・シラスタチン(レカルブリオ
Ⓡ)が有効と考えられる。IMPなどのクラスBに分類されるカルバペネマーゼ産生菌に対しては、アズトレオナムも有効とされているが、他の耐性機序を有する可能性もあるため、薬剤感受性結果を踏まえて判断する必要がある。それ以外の選択肢としては、コリスチンやチゲサイクリンも考えられる。 CPE感染症の治療については、国内未承認、または開発中ではあるが、今後使用可能になる抗菌薬の候補がある。中でもセフィデロコルは鉄トランスポーターを介して細菌のペリプラズム内に効率よく取り込まれ、細胞壁合成を阻害するユニークな機序を有する抗菌薬であり、カルバペマーゼの種類によらず有効性が期待できる薬剤である。