表1:JCIの審査項目( 第5版基準書、全14章で構成)
表2:International Patients Safety Goals
(IPSG;国際患者安全目標)
Q4. 審査に至るまでは順調だったのでしょうか。
高橋:JCIの認証基準を示している「基準書」は医療安全と医療の質の改善について14章から構成され、我々が受けた第5版には291の基準と1146の審査項目が記載されています(表1)。
審査項目のなかには一読しただけでは意味がつかめないものもありました。例えば「国際患者安全目標」(IPSG)というもっとも重要な遵守事項のなかに「患者を確実に識別する2つの識別子を使って患者を認証せよ」とあるのですが、具体的に何を使えとは書いていません。国や施設の状況に応じて対応せよということであり、当院ではすべてのスタッフが病室に入るたびに患者様に名前と生年月日を尋ね、外来でも医師は診察時に名前と生年月日を尋ねるよう徹底しました(表2)。
医師は医師免許のコピーではなく原本を提出せよ、また、全スタッフの職務規定書を提出せよ、の要請には頭を抱えました。JCIが作られた米国では専門医制度が徹底しており、医療行為の領域が厳然と決められています。このため、パート勤務の医師の履歴などもチェックが必要でした。
審査前には種々の治療方針や手順を英文にして「ポリシー」として提出します。ポリシーは200条以上にもなりました。審査結果がポリシーと違っていれば「全然違うではないか」と指摘されます。また、JCIは「ポリシーは直接かかわる部署だけでなく、院内すべてに周知徹底させよ」と要求しています。
ポリシーは、いわば縦糸と横糸によって織りなされている、統一性と整合性のとれたものです。JCIが求めているように、安全や衛生などについて全員の認識を統一し、部署特有のローカルルールを廃止して院内全体の共通ルールを作ることは重要です。しかし、実際問題として1000人以上の院内スタッフに認識を徹底させるのは大仕事でした。また、当院は大学関連病院であり、毎年医師の3割が入れ替わることも意思統一を難しくしています。