表2 quick SOFA (qSOFA)
この定義の改訂で注意しなければいけないのは、この新定義は成人患者のみに適用され、小児患者には適用されないことである。小児患者での敗血症の診断は、従来通りSIRSをもとにした診断基準による
5)。
この新定義の診断で使用されるSOFAスコアは、集中治療室(ICU)以外の環境では一般的ではない。また、臓器不全を呈していない患者のスクリーニングとしても適していない可能性が高いため、簡便な指標としてquick SOFA (qSOFA)(
表2)を用いることが提案された。救急外来を受診した患者や一般病棟に入院している患者で、何らかの感染症が疑われたうえでqSOFAの3項目中2項目を満たすと、敗血症の可能性が高いと判断しようというものである。感染症(疑いを含む)+qSOFAで2項目以上陽性の場合は、SOFAスコアの採点に進み、それが2点以上であれば敗血症と診断される。一方、qSOFAの2項目を満たさなくても、敗血症を疑う場合はSOFAスコアによる診断に赴いてもよい。
qSOFAは、米国の大規模データを中心に評価され、qSOFAが2点以上を呈した患者は、それ未満の患者に比べて、3~14倍の死亡率を呈しうるとされた。日本のICU外の患者で本当にこれが言えるのかどうかについては、今後、国内でもこのqSOFAの意義を評価する必要があろう。
今回提案されたqSOFAは、単独でスクリーニング・ツールとしても使用可能であるが、近年、わが国でも浸透しつつある早期警告スコア(Early Warning Score; EWS)の使用と関連づけても使用可能である。ここでは、EWSの一例として、英国全土で使用されているNational Early Warning Score (NEWS) を紹介する(
表3)6)。NEWSの運用では、合計で5点以上を警告値として、ICU入室も含め、院内の専門家(あるいはRapid Response Team)にコンサルトすることにしている。また、4点には満たなくても、1項目で3点〔Red Scoreと呼ぶ(
の3点の項の背景が赤色になっていることに注目。たとえば呼吸数では25回以上)〕であれば、それも専門家にコンサルトする基準となる。qSOFAとNEWSを比較すると、qSOFAでの呼吸数22回以上はNEWSで2点、さらに呼吸数が25回以上となるとNEWS 3点となる。収縮期血圧は100 mmHg以下でNEWS 2点、さらに90 mmHg以下に低下するとNEWS 3点となる。意識レベルはA以外のV, P, UはすべてNEWSで3点である。すなわち、qSOFAで2項目を満たす場合は、少なくともNEWSで4点(多くの状況で5点以上となりうる)となり、その理由が敗血症以外であっても、重症管理をする部門へのコンサルトの対象となる。
EWSは院内急変を急変前に察知することにより、防ぎえる死を確実に防ごうという試みである。このことは、敗血症に限ったことではないものの、このEWSやqSOFAを活用すると、敗血症も早期に認知できる可能性が示唆されている。