院外心停止後に蘇生した意識消失患者では、死亡率および罹患率がともに高く、神経機能障害が顕著である。1 この場合の管理は、まず増悪原因の急性期管理を行い、次に患者にとって最良の神経学的転帰を得ることで構成される。
これまで様々な神経保護戦略が試みられてきたが、現在、NICEガイダンスは低体温療法の使用を提言している。2
初期の試験では、最長24時間の治療的低体温療法(32~34℃)と標準治療とを比較した。こういった試験で神経学的転帰および全生存期間の改善が示された。3,4 この結果に基づき、国内および国際ガイドラインで低体温療法が採用された。これらの試験で特筆すべき点は、脳酸素の必要量増加に伴う神経学的転帰の悪化に関連する発熱を、対照群の多くの患者が呈したことである。5
上記を背景に、発熱を交絡因子から除外するため、低体温療法と対照の平熱療法アプローチを比較する多施設共同無作為化対照試験であるTTMトライアルが実施され、36時間の治療において体温33°℃と36℃を比較した。TTM試験では、長い停止時間後の初期リズムが心静止である症例、頭蓋内出血および脳卒中の既往、初回体温が30℃未満である症例を除く、院外心停止後の全症例を選択基準に加えた。この試験では神経学的転帰や死亡率において差がみられず、院外心停止では発熱予防が神経保護のための最重要要素となるという理論を裏付けるものとなった。6 本症例は、初期リズムが心静止であり心停止は虚血に起因していない場合でも、Arctic Sun™ 5000 体温管理システムを使用した体温管理療法が良好な神経学的転帰をもたらす可能性を示している。
参考文献
1. Moulaert VR, Verbunt JA, van Heugten CM, Wade Dt; Cognitive impairments in survivors of out of hopsital cardiac arrest; a systematic review; Resuscitation; 2009; 80; 297-305.
2. NICE Guideline IPG 386 Therapeutic hypothermia following cardiac arrest: Guidance. www.nice.org.uk. Accessed on 10th September, 2014
3. Bernard SA, Gray TW, Buist MD, et al; Treatment of comatose survivors of out-of- hospital cardiac arrest with induced hypothermia; N Engl J Med; 2002; 346; 557-63.
4. The Hypothermia after Cardiac Arrest Study Group; Mild therapeutic hypothermia to improve the neurologic outcome after cardiac arrest; N Engl J Med; 2002; 549-56.
5. Leary M, Grossestreuer AV, Innacone S, et al; Pyrexia and neurological outcomes after therapeutic hypothermia for cardiac arrest; Resuscitation; 2013; 84:1056-61.
6. TTM Trial Investigators; Targeted Temperature Management at 33°C versus 36°C after Cardiac Arrest; NEJM; 2013; 369; 197-206.