上記事例発生を契機に小児ウイルス性疾患発生時の対応マニュアルと院内感染対策上問題となる感染症が発生した場合の連絡体制を整備した。さらに、外部委託を含む職員全員を対象に小児ウイルス性疾患4疾患の抗体検査を実施し、空気感染する麻疹と水痘の抗体陰性者にワクチンを接種した。麻疹・風疹・流行性耳下腺炎の抗体検査は感度の比較的良好なHI法、水痘はIAHA法で実施し、費用は病院負担とした。ワクチン接種は、副反応を考慮し、抗体非保有者のうち希望者に接種し、費用は個人負担とした。
麻疹を例にとると、1750名のうち405名(23.1%)が抗体陰性であった。既往歴・ワクチン接種歴があるとされた783 名のうち、実際には203名が抗体陰性であった(図1)。この結果から、麻疹が発生したときに、既往歴やワクチン接種歴の聴取による接触者対応では不十分であることが明らかである。 麻疹抗体陰性者の約57%(229名)、水痘陰性者全員(4 名)がワクチン接種を受けた。翌年度からは、新採用職員を対象に抗体検査とワクチン接種を実施し、病院がそれらの結果を個人情報として厳重に管理して、院内感染防止対策に役立てることとしている。また、外部委託職員や本院で臨床実習を行う学生に対しては、少なくとも抗体検査を実施して抗体保有の有無を明確にしておくことを受け入れの条件とし、さらに抗体陰性者にはワクチン接種を推奨している。