治療終了後も、患者は依然としてGCS8の意識消失状態にあったが、発作は抗てんかん剤で制御されていた。神経学的検査では、左側の自発的運動および右片麻痺3/5、および両側の足底伸筋反射が認められた。患者には、抗凝固剤、抗浮腫剤、軽度肺炎のための抗生剤、経腸栄養液による薬物療法も行われた。その後ICU入室3日目に、患者は抜管された。
8日目の拡散強調MRIでは、脳梁膨大部、および両側の前頭、側頭、後頭の皮質、皮質下白質において拡散の制限がみられ、急性・亜急性の梗塞が認められた。ICU19日目、患者はGCS13の驚異的な覚醒を果たしたため、予定されていた胃瘻造設はキャンセルとなった。その後、患者はICU から神経内科へと移り、運動失調症と歩行障害の治療のため2カ月間かけて理学療法とリハビリテーションプログラムを受ける計画となった。30日目の拡散強調MRIでは、右後頭頂部および後頭部の既存の梗塞に続発した、FLAIR Aシーケンスで高信号、T2Aシーケンスで低信号の不均質の脳軟化・グリオーシス領域が認められた。
我々の知る限り、本症例は、放射線造影剤(RCM)によるアナフィラキシーに起因する低酸素性脳症の発現後に低体温療法を受け、良好な神経学的転帰を得た唯一の報告症例である。