Q 具体的にどのような活動をなさっていますか?
定期的な活動としては、月1回の感染対策委員会、毎週の病棟ラウンド、カテーテル関連サーベイランスのためラウンド、SSIサーベイランスのためのラウンドの4つです。サーベイランスは、従来は看護局の感染対策委員会で行っていたのですが、漏れがあったり統一性がなかったりして、あまり良いデータが得られませんでした。そこで、現在は、判定の指導を兼ねて私が一緒にまわっています。定期的な活動以外に、何か問題が起これば、まず検査室のメンバーがその病棟に行って状況を把握し、感染対策委員会を招集すべきかどうかを判断します。
Q MRSA新規検出患者を対象としたラウンドは、どのように行っていますか?
毎週、全病棟を回るには人手が限られていますので、なるべく効果的なラウンドができるように、週内にMRSAが新規に発生した病棟に限定して回っています。調査票に記入しながら、カルテやレントゲンなどの検査結果を確認し、医師らとともに総合的に判断していきます。
Q 病棟で特に注意して確認されていることは?
「埃」を重点的に調べます。当院では、1病棟で1週間のうちに3名以上、新規のMRSAが発生した場合には、アウトブレイクだと判断しています。先月、外科系のある病棟で断続的にSSIが発生したので、早速、調査をしました。すると、床はきれいだったのですが、患者さんのベッドの照明や酸素や笑気ガスなどの中央配管の周囲に埃が積もっていることに気づきました。そこで、拭き取って検査をするとMRSAが多数検出されました。
Q MRSAが環境から感染しているのですか?
MRSAは、環境からの感染はあまり重要でないと言われてきましたが、それはきちんと清掃されていることが前提であり、現実には環境から鼻腔や口腔にMRSAが定着しているケースが多いと思うのです。患者さんが寝ているベッドは意外と低いですから、人が走ったり、白衣が触れたりすることで床にある埃は舞い上がります。また、布団をバサッと動かせば上からも埃が降ってくる。埃には高い確率でMRSAが存在しています。ですから、掃除を徹底することが一番の感染対策なのだという認識を持っています。
Q 「埃」の中にMRSAがいるのですね?
MRSAに限らず、グラム陽性菌全般に言えることですが、比較的乾燥に強いのです。通常は球菌の形状で存在するのですが、乾燥すると縮んで小さくなって、非常に軽くなります。それが静電気で埃に付着して環境中に存在していると思われます。それが、人体に入ると菌は再び湿性を帯びて、元の活性を持ったブドウ球菌に戻るのです。